「春カスミ」


〜4、めばえ。


春カスミの、うす白い風景の中で見えてくるのは、
誕生であり、めばえであり、そしてまた再生と復活である。
そしてそれが象徴するのは、何かの予感であり、
ためらいとおどろき、そしてまだ見ぬものへの憧(あこがれ)と
祈りである。

未知の何かの前兆であり、それを暗示し予測し、
示すものである。そしてまた、それへと誘い、
導くものでもある。そうしたことのすべてを、
春カスミのほのかな白さが象徴しているのである。

それは心地よい春の日差しであり、いまだ薄ら肌寒い
外気の寒さのなかから太陽が誘う生の世界へと
せきたてる暖かさでもある。そして、それがまた心地よいのは、
空気中に水分が多く、にもかかわらず、夏のように
ベタつくことが無いからである。

柔らかく優しい太陽の日差しと、豊かな水分が、
地上から生命を押し出し、そして導いているのである。
まさにそうしたことを、薄白き春カスミの空気の色は暗示していて、
そしてそれをまた、無意識のうちに象徴しているのである。

春カスミの水分は、夏の暑さでも、冬の寒さでもなく、
生まれたばかりの生命の開化にちょうどよい、熱と水分を
もたらしている。太陽の直射光はカスミのなかで乱反射し、
分散して、おだやかで優しい暖かさで生命全体を包んで
いるのである。


戻る。             続く。