「自分自身」


〜3、理性。


「現在の意識」とは、いま、現実に生きて活動している意識のことである。そして、その対象(相手)との直接的関係、何も仲介せず媒介もしない、自分自身と外界との直接的関係である。歴史的にも地域的にも限定され特定される、自意識といったものが明確に示され、その原理と境界、具体的なすがたといったものが明確にとらえられたのである。

自分は自分自身というもの、自分の精神、自我というのをとらえたのである。そして、「現在の意識」とは、他の者ではなく、他の者の入る余地のない、今を生きているのである。それは自分自身の、純粋の自意識を示している。

自分のなかにある、自分でもどうにもならない、抵抗不可能な必然性や原理といったものを、外の自然に対しても感じ、発見したのである。表面の見えるままの外面ではなくて、それを動かし、秩序づけ法則づけている、内面の理性といったものを自然の中に見ているのである。

自己の経験と記憶は、そうやって現実の出来事を観念化し、自然の法則としてとらえ、そして理性化し、自己の精神の中に蓄積してゆく。そしてその、もっとも大事な部分が、観念のなかで秩序づけられ、体系化され、順序づけられ、理由付けられたのが「理性」である。そうやって、一般的で普遍的な原理として、必然性として記憶されるのである。そしてまた、それが理性なのであって、人間は自然の中に、その隠れた見えざる内面の世界に、自分自身の理性の世界を見ているのである。

戻る。              続く。