「自分自身」
〜5、境界線
従ってまた、自分を取り巻く世界全体もまた、変わってしまったのである。まったく異なる意味を持つに至ったのである。たしかに自分の肉体も、そしてまた、現実の世界そのものも何一つ変わってはいない。変わったのは、イヤ、根本的に変わってしまったのは、自分自身の、内面世界なのである。 自分の精神が、何か異質なものに変わり、自分をとりまく現実世界の持つ意味といったものが、本質的に変わってしまったのである。ひとことで言って、別世界を生きている。それまでとは異なる世界を生きている。そして、現実から一歩退いて、区切られた別の世界から 現実を見ている。 「区切られた」世界とは、自分自身の内面世界であり、それが自覚されたのである。精神が自分と他者との間に境界線を持つに至ったのである。そして境界線の中の自分自身の精神の領域というものを自覚したのである。否応(いやおう)なく、そうした自分を意識しているのである。精神は自分で自分を意識している。まるで他人のように。 |