「アイデンティティー」


〜3、感情。


ヨーロッパの年間降雨量は、日本の7〜8分の1程度にしかならないという。また、大陸のなかにあって湿度は日本と比べて低く、そして乾燥している。だから暑いという気候はあっても、蒸し暑いという感覚はない。また、冬の襲いかかるような寒さもない。彼らはそれを、底冷えなどと言わずに「痛い」寒さと言っている。

寒さは、質×量である。質つまり気温が低くても、量が少なければ寒く感じないのである。冷たいのであって寒くはないのである。それは、熱を運ぶ空気中の水分(湿気)の量によって、大きく影響されるのである。だから日本にくらべると冬の気温の差はたしかに大きいが、人間の身体に感じる暑さ寒さははるかに少ないのである。(湿気による体感温度の違いは、サウナ風呂とミスト風呂を比較するとわかりやすい。気温ははるかに低くても湿気の多いミスト風呂も結構熱く感じられる)

特にラテン系といわれる地域、イタリア、南部フランス、スペインなどはそれらに加えて四季の変化の差が少なく、気温も高い。年中そうした傾向が続くのである。それと関係があるのかどうかは別としてたしかにラテン系の気質・性格といったものは、情熱的であり、陽気であり、おおらか、明瞭、楽天的である。

性格は内向的ではなく、外向的であり、一人でくよくよ思い悩んだりせずに、感情をすぐに表に出して発散する。感情的ではあるが、もとの感情はすぐに発散されて、消えて、別の感情が入ってくる。感情の抑揚の、際限のない上下の繰り返しの世界を生きている。また、そうしたことが情緒のリズムや特徴ともなっている。

もどる。              つづく。