「自意識」


〜5、境界線上。


いままで日本列島を、島という特殊な地理的条件から見てきたが、これをもっと別の、地球規模の地理学でみると、そこにもかなり異質で、特殊な条件と制約が見られる。ひとことで言うと、境界線上に位置しているのである。                                       
日本列島は、地球の上空で気象を決定している寒帯と熱帯の境界線上に位置している。明瞭な四季はそこから来ている。寒帯の気流と、熱帯の気流が衝突する真下に日本が位置している。

また、大陸と海の境界線上、大陸性と海洋性の気団がせめぎ合う通り道ともなっている。梅雨がそうで、豊かな水と豊富で穏やかな日光が、集約的な稲作農業を極限にまで発達させた。

そしてまた、日本を取り囲む海は、暖流と寒流の行きかう接触点、交流地点でもあって、まさに近海は畑そのものであって、異常なまでに漁業を発達させた。牧畜が発達することはなかった。牧畜は、むしろ不向きであって、その必要もなかった。ある意味、中途半端なベジタリアンでもあった。

地底のプレートとマグマの縫い目、その境界線上にそって日本列島が並んでいる。水が清く、地形が複雑なのも、そこから来ている。地震と津波が多いのも、そうである。そしてまた、それは日本人の情緒と気質に深く影響している。例えば「いさぎよさ」がそれであり、曖昧さを好み、「恥を知る」というのも、こうした日本列島が持つ地理的・歴史的環境が深く影響している。

もどる。              つづく。