「島」


〜2、作法。


だが、これだけではない。山の多い日本の複雑な地形は火山列島というプレートマグマの縫い目の、ちょうど真上に位置しているのである。地震の多発地帯なのである。そしてさらに、燃えやすい建物が火災となって、追い打ちをかける。むしろ、日本の実情から言うと、地震の後の火災の方が、より被害が甚大である。

逃げ場のない限れた空間の島の中で地震が起きる、台風がやって来る。それらは予測が不可能で、突発的で、一過性のものである。しかも恒例の年中行事のように毎年必ずやってくる。地震もそうである。また紙と藁と木で作られた燃えやすく密集した日本の居住空間は、すぐに燃え広がりあたり一面のを焼き尽くす。しかしそうしたことは日本人にして見れば最も身近な日常の世界なのである。

そしてそれはまた、何よりも破壊的かつ壊滅的なのである。生活の基盤が無くなる。住居がなくなり、食べ物がなくなり、そしてまた、職業そのものが成り立たなくなるのである。にもかかわらず、そこで生きて行くしかないのである。日本は島であり、空間には限りが設けられているのである。

だから気性・気質はアッサリしていて、執拗で陰湿なものを嫌う。それは個人の好みというよりも、そうでないことには社会が成り立たないのである。社会が存続し得ないなのである。共同体としての社会が破壊されてしまうのである。だからまた、キッパリした性格が尊敬もされるし、そこからまた、「潔(いさぎよ)い」という気持ちの持ち方が生まれてくる。のみならず、「潔さ」を作法にして、そのなかに美意識をすら持ち込んでいる。集団自殺を「玉砕」と言い、自爆攻撃を「散る」などと言っている。

もどる。              つづく。