「桜（さくら）」
〜４、名人芸。
| そして、より直接的で現実的なのは、日本の社会というのが閉じた島の中にあって、敗者は常に必ず、すぐに追い詰められて滅亡するということである。大陸的な意味での「辺境の地」は、日本列島には存在しないのである。権力を握るか滅ぼされるかの二者択一だけだということである。政治・社会的に対立する者との共存が無いということである。地政学的に、また空間的にも存在し得ないのである。物理的現実がそれを許さないのである。 だから、権力は常に一極へと指向する。それ以外の考え方は許されないし、そうした発想そのものが無い。頭の中の構造そのものが、そうなのである。常に勝者へと、群れる、媚びる、迎合する傾向を示す。節操の無さと、変わり身の鮮やかさは特に際立っている。いさぎよく、あっさり、きっぱりと。実に慣れきっている。まったく名人芸でもあって、技（わざ）でもある。 そして、さらにもっとも手っ取り早く似せる。パクる、成り済ますことに異常に長けている。だれもがそうだから、だれもそれに気づかないし、気にもならないし、それを不思議にも、不可解とも感じなくなっている。そうした自分と他人との区別の限りなく曖昧な世界である。 |