「自意識」
〜6、別世界。
こうした状況、島と大陸との相対する関係、間(あいだ)にある海を境にして、まるで鏡(かがみ)を見るように大陸を見て来たのである。それは反面、自分の姿でもあり、そしてまた同時に自分とはまったく別の世界でもあったのである。 それは言わば、ピンホールカメラの世界のようでもあって、その限りなく小さく極小の出入り口でもって、外の世界とつながっていたのである。と同時にそれは、ただ一つの外からの刺激でもあったのである。唯一、自分とは異なる原理や必然性でもって、自分自身を見ることが出来たのである。それは言い換えると、日本という島を外から照らしだす、自分自身の中には存在しない異質な光だったのである。 それを通して、まさに日本人は自分自身の精神の世界を見ていたのであり、自分の中にあって、自分とは異なる異質な別の世界を見ていたのである。それは同時にまた、自分自身の姿(すがた)でもあり、自分自身の心の中の世界でもあったのである。 そうした、分裂した精神の関係性において、自分というのが意識され自覚されてきたのである。こうしたことが海によって隔(へだ)てられた空間、大陸と島という地理的関係のなかで、自意識がめばえてくる場面となっていたのである。 |