「別の意味」
〜11.息苦しさ。
暑さ寒さというのは、気温の無機的な数値で表される。しかし実際には、気温だけで暑さ寒さを表現するのは不十分であり、はてしのない誤解である。というのは、現実に熱を奪い、そして運んでくるのは、空気中の水分、つまり、湿気だからである。 温度計の上で温度が高い、あるいは低くても、湿気がなければ熱などほとんどなく、人間の身体には暑くも寒くもないのである。熱そのものが無いのだから。熱とは、質(温度) × 量(水分) なのである。質(温度)だけが高くても何の意味もないのである。量(湿気=水)があって始めて現実の熱として感じられるのである。 だからそうしたことが、アフリカや南洋の熱帯地方よりも、日本の夏が暑く、そして蒸し暑く、息苦しく感じられる理由なのである。それは感覚的というよりも、生理的・情緒的な息苦しさである。 あるいは、北海道に住んでた人が兵庫県(本州)に来て、寒く感じるといったことが起こる。気温自体は北海道よりも高いのであるが、湿気が多いために、寒さというのが直に肌に迫って来て、底冷えするのである。こうしたことは銭湯で、気温は高いが乾燥している「サウナ」がぬるく感じられて、反対に、気温は多少低くても湿気の多い「ミスト」の方が、あるいは湯船の湯の中が暑く感じられる、ということからも理解できる。 |