「別の意味」
〜8、湿気。
そしてまた、これが日本という歴史的・地理的な世界の中で、人間というのが自分を意識する場面となっている。それは歴史とか社会というよりも、自然という日本の自然環境や条件が強く影響しているように思えるのである。だからまた、考え方や行動パターンは、実際的・現実的・直接的である。考えるより先に行動している。そして行動しながら考え始めている。こうした自然との関係が、日本の自意識の特徴のように思えてくるのである。日本人の自意識・自己認識の主要な場所になっているように思えてくるのである。 たしかに自然が大きく影響している。湿気の多い日本の気候がそうである。人間の情緒に強く影響し、そしてそれを規制し続けている。湿気(空気中の水分)というのは気持ちの中で持続するもので、気分の切り替えというのに多少とも時間がかかるのである。 ただ感覚的な暑さ寒さだけでなく、それが身体の内部に入り、しみ込んでくる感じなのである。そして身体の一部になって中から自分自身に迫ってくる。感覚というよりも、情感的な感受性なのである。気分や心情といったものなのである。そしてそれが、感覚の感じ方や、その表し方に独自のリズムのようなものをもたらしている。これが、気温と結びついた湿気の、情緒的な表れ方なのである。湿気というのが、人間の感覚を通して「情緒」や気分に反映され表現されている。 自然の移り変わり、季節や朝夕の変化というのがあまりに急で忙(せわ)しく、人間の気分といったものが常にそれに引き回され、そして、人間もまたどこかそれに応じていて、あるいは、それを求めて落ち着かず、せっかちで気せわしいところがある。また、真近に「迫る」といった印象を受けてしまうのもそうである。 |