「別の意味」
〜9、転変。
乾燥した極寒のシベリアや、炎天下の砂漠のように、変化のない同じことが持続し続けるということはないが、かといって、明朗で透き通るようなわかりやすさでもなく、気持ちのあり方、持ち方といったものが多少とも残り、持続するのである。 湿気というのは人間の体内に入ってくるのである。暑さや寒さ自体は、肉体の表面を刺激するもので、内と外がハッキリと区別されている。しかし、湿気は違う。いつの間にか感情や情緒に混じって入り込んでいる。例えば、夏の蒸し暑さは感覚の暑さでなくて、心理的な「やり切れなさ」なのである。 真冬の極寒、真夏の酷暑のなかでは、気持ちの切り替えどころではなく、それよりも直接、暑さ寒さの極限状態に対峙しているのである。そうした中では気持ちの切り替えも大した意味を持ちようがなく、また、容易に切り替えの出来る状態でもない。ところが日本の四季といったものは、それがころころと変り、移り転変し続けるのである。天気予報の「晴れ時々曇り、一時雨、または所により吹雪く」というのが、めずらしくない世界なのである。 |