ヨーロッパのの起源(古代ギリシャ) p14
「未知」
臆病になるのは、それが未知のものだからである。
それは、いままでとは違ったかかわり方を求めるからである。
かかわり方の違いから、今までよく知っていたつもりのものが、
まったく訳のわからないものに見えてくる。
それは自分というのが、外の、つまり現実とは別の世界の、
異質な世界から現実を見ているからである。なぜか?
自分の精神はすでに、異質な世界を生きているのである。
だから現実のことが、すべて、異質なわけのわからない、
未知のものに見えてしまうのである。
この異質の世界の住人は、この現実というのを、
いままでとはまったく異なる方法で生きようとしている。
その使い方やかかわり方、その意味や理由、
そして、その暮らし方まで含めてそうである。
考え方や感覚の感じ方まで、それまでとはまったく異質で、
違ったものになっている。だから、臆病で疑り深く、
そしてたまに、非常に大胆になるのである。
そうなるしかないのである。
現実のすべてが未知のものになってしまった。
そしてそれは、むきだしなのである。
だから用心深くなってしまうのであるが、
にもかかわらず、現実はこれしかないのである。
これにかかわって、生きて行くしかないのである。
このどうにもならない現実を信じるしかないのである。
だが、ギリシャの場合は事情が違っていた。
ギリシャの未知の自然、始まったばかりの未知の生産活動は、
そのまま、すなおに人間に答えてくれたのである。
そして、まさにそれが、ギリシャの精神と風土だったのである。
これから新しく生きようとする者にとって、
ギリシャの自然環境が、それとうまく一致したのである。
戻る。 続く。
|