ヨーロッパのの起源(古代ギリシャ) p15
「予感」
では、未知の現実に、いったい何を求め、そして信じたのか?
それは人間にとって親しいもの、交流し、利用し合えるもの、
わかり合えるもの、信じるもののことである。
自分を生かし、形作っていく相手として、現実の世界を
見ているのである。だがいまだ未知のものである。だがそれは、
くり返される経験から予感し、期待できるものでもある。
そして、いったい何を予感したのか?
自分にとって親しいもの、いまだ具体的にはわからないが、
交流し合えるものとして、信じることが出来たのである。
そしてそれに、素直に、ギリシャの自然が答えたのである。
農耕から商工業、採取・略奪・戦争から交易・海運へと、
産業の中心が移行して行ったのも、このギリシャの自然が、
その背景にあったのである。
予感とは予測でもあり、暗示でもあり、象徴でもある。
それは、自分の係り知らない未知のものなのである。
それまで蓄積されて来た経験と記憶の外にあるものである。
そして、それは同時に、そうした自己の意識を無視して、
素通りして、直感として、第六感として、あるいはまた、
自分の意識の知らない、自己の肉体の記憶として、
直接に感じるものでもある。
それは、動物的な本能、衝動といったものなのかも知れない。
いまだ知られざる未知の、自己の精神の闇の底を、
一瞬、かいま見たのかも知れない。それは、
自己の知られざる本当の正体だったのかも知れないのである。
戻る。 続く。
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