index < 日誌 < 2018 < 10-「宿命」 |
ちょうど、男と女がひかれあうように、なにかを、自分にはないもの、欠けているもの、届かないものを、心の中のどこかで願い求め続けている。 心のなかのどこかかたすみで、ぽっかりと開いてしまった、とりかえしのつかない、裂け目が見えてくるのである。なにかが欠けている。それは精神の調和というもので、自分自身のなかに、もともとあったものなのかも知れない。それを失くしている。見当たらない、ぽっかりと開いた底なしの空洞のうように。 ちょうど暗い闇の世界から、光かがやく天上の世界を見上げたときがそうだ。一瞬、なにも見えなくなることがあるが、そうした瞬間である。その瞬間、なにか別のものを見ているのである。闇でも光でもなく、自分でも他人でもない。そうした現実にはない、何か別のものを見ているのである。 その瞬間めまいがしていて、何も見えていないはずなのであるが、瞬間的に、ほんのまばたきするくらいの瞬間に、何か別の世界、自分が生きている現実にも、日常の世界にもない、それとはなにか別の、世界を見ているのである。 もちろん、それがなんなのか、自分でもわからないのであるが、それはもしかすると自分自身を見ているのだと思えてくる。現実でも、かといって頭の中だけの意識の世界でもなくて、それらとは別の世界を見ている、と思えてくるのである。 |