index < 日誌 < h感じ方< 「感覚」/p7


 
2 祖先。



人間は、自分の目のなかで、祖先の記憶の世界を見ている。それは、祖先から受け継がれた感覚器官の、機能の仕方であり、役割であり、肉体の生理作用のリズムや流れといったものである。人間が見るもの、ないし、見なければならないものの区別や識別、その範囲や深度、そしてその方向を定め、規制し条件付けているのである。そうした意味で、人間はこの世に生まれた途端、すでに、そうした宿命の世界を生きているのである。そうした、条件付けられたレールの上を歩いているのである。

それは、人間が生きてゆく上で、どうしても必要な生存の仕方なのである。そうしたことが数千数万年にわたって蓄積し堆積され、そうして行動の型として、あるいは感覚の感じ方の様式や原理として定着し、固定化されて来たものなのである。だからやはり、人間が見るもの、聞くもの、触れるもの、それらすべてにおいて、その仕方や感じ方、あるいは様式や原理において、それは、自分の祖先が生きて来た結果と言えるのである。それ以外にないのである。

戻る。            続く。




index < 日誌 < h感じ方< 「感覚」/p7