index < 日誌 < o四季 < 「四季の色」p6/


 
3 春の背景。



大気が白いのは、水蒸気を含んでいるからで、地表面と大気の温度差を意味している。

地表に直射日光があたり、水分が蒸発し、これが冷たい大気のなかで飽和されず、水蒸気のまま残るのである。これが霧である。ただ、冬には水分そのものが少なく、あるいは凍ったままで、霧とかカスミはそれほど発生しない。むしろ、早朝の一時的な霧が発生することがある。

春には、それが一変し、南からの湿気を含んだ空気が、夜の地表で冷やされ、水分が絞り出される。さらには、朝の直射日光が地表から、特に川辺や田んぼ、山々の奥から水分を蒸発させて供給し続けている。だから春のカスミは、ずっと昼過ぎまで、あるいは一日中、空がカスミでかすんで見えるのである。

春の景色の輪郭は、白っぽいというか、透明というか、ものの色だけで線を構成している。あるいは輪郭線というのが、白いカスミのなかで、とけてにじんで消えている。色の鮮やかさだけが見えてきて、その境界が白い水蒸気の背景のなかで消えている。
だから、景色というのが、白い背景の中でちょうど浮かんでいるように見える。

そして、この白さは空気の、熱と水の穏やかな暖かさを示していて、生命が現れ出る場面ともなっている。

戻る。           続く。

index < 日誌  o四季 < 「四季の色」p6/