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2、間接光。



間接光の世界は、直射光(直接光)とは大きく異なる。間接光とは、元々は太陽の直射光だったものが、あたりかまわず無差別に反射を繰り返して、その結果、ほとんどすべての角度から、物体としての風景を照らしている状態である。環境光とも言われている。だから、間接光だけだと影はほとんど発生しない。

間接光だけだと明と暗の、あるいは光と影のはっきりした区別が存在しない。それらがいっしょくたになっている。ケジメがなく、カゲの輪郭線というのもはっきりしない。むしろ、境界としての輪郭線をぼかしているようにも見える。

どんよりした曇り日、あるいは日の出前の早朝の風景がそうである。物体が他の物体に落とす「影」がない。風景全体から影が消えている。光はすべての角度から物体を照らしていて、むしろ、物体そのものが非常に弱い光源のようにさえ感じられてくる。自分が非常に弱い光源の中の世界を見ている、または、自分が光源の中にいるような、そんな気さえしてくる。

直射光が照らし出す表面の明るさと、それが落とす影の間に間接光が入り込んで、それらの輪郭(境界線)を曖昧にしているのである。そして直射光が無いというのは、その輪郭の線が限りなく薄れているということであり、明暗の濃淡(グラデーション)だけで世界が映しだされているということである。物と物との間の境界線、区別といったものが薄れているのである。見えないところにあるはずの、何か得体の知れない個性といったものが消えている。

たしかに、ものとものとの間の輪郭線が見えてはいるが、それが全体としての景色の中の模様に過ぎなくなっていて、その一つ一つがそれぞれに個性をもった物体ではなくなって、景色全体が何か平板な奥行きの欠いた、平面でつながっているだけの作り物のように見えてくるのである。偽りのイミテーション、まやかしの非現実的な感じがしてくるのである。まるで夢の中の世界のように。自分の意識と外の現実との境界が限りなく薄れているのである。

戻る。           続く。

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