index < 日誌 < d無意識。 < 「カゲ」p4/


 
3、違和感。



だからそれは薄明りの下の、いわば、月あかりの下の、夜の世界のようにも見える。のっぺりしていて、奥行きがなく、なにもかもが弱い光の中で、うっすらと、ぼんやり照らし出されている。それはまるで、自分の心の中を見ているような、そんなぼんやりした、なにもかもがあいまいで見えにくい世界である

光に照らされた景色が、他の景色に影を落とすといったことがなく、景色表面の明るさの濃淡もあいまいでぼんやりしている。ひとことで言って、景色に影の線がないというのは、非現実的な印象を受けるのである。どこか別の世界、異質な、現実ばなれした
夢の世界のような違和感を感じてしまうのである。 

線がないというのは、見ている世界というのが、つながらず、まとまりを欠きケジメがないということである。自分にとって、つかみどころがない世界ということである。世界というのが意識の底で沈んだままで、眠ったままのように見えてくるのである。景色の中で、色と色、カタチとカタチが違うというのは、たしかにハッキリとわかるのであるが、それらのあいだに境界線というのがないのである。カゲで区切られ、カゲで仕切られ、カゲでつながるはずのカゲの「線」そのものが曖昧なのである。

物と物との間を区切っているはずの、物自体とは区別される「線」がない。つまり、物同士がどこかでつながったままなのである。それとは違う区別されるはずのものが、この景色の中にはないのである。だからまた、自分の意識の中での区別も曖昧で、自己というのが眠ったままで覚めることがない。そうした、自己と他者の区別が曖昧な世界である。現実に方向性が見当たらず、そこからまた、その変化の秩序や傾向が定められず、時間という概念も曖昧なままである。

戻る。           続く。

index < 日誌 < d無意識。 < 「カゲ」p4/