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3、<拡大する線>



薄灰色の、白く歪んだ線が、広がって、太くなり、開いていって、そしてそのなかが変色変形していって、それが何かの輪郭線の表面として映し出される。

たとえるならば、赤ちゃんが生れ出る瞬間であり、暗い部屋の中で、薄明りのトビラが開いてゆく場面でもあったり、闇の中の裂け目から天上の光を仰ぎ見る瞬間でもある。あるいはまた、足元の地面が揺れて裂けていって、その暗い裂け目からオバケの手と目が見えてきて、私をひきずり込もうとしている瞬間でもある。

薄灰色の白い線が裂けて、えぐれて、広がっていって、その中から何かのイメージが現れてくるのである。それは、夢とその意識の中での、情緒の急激な変化を意味している。衝動とか感情とでもいったものである。ただし自分でも、その理由がわからないのである。

それは、意識が求める象徴の世界である。自分の情緒のなかにあって、それが求め指向する衝動といったものが、イメージとして映し出される。だから、理由も、すじ道も、目的も、そうした頭の中で考えるといったことがない。そうした直接的で本能的な衝動なのである。

だからまた、そうした象徴が、空間の中から歪んだ線とともに現れ、そして見えてくる。思考から切り離された、純粋な衝動や、壊れそうな情緒のきしみといったものが、直接、イメージとして現れるのである。線自体が、そうした精神の裂け目を現わしているのである。

戻る。             続く。

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