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3、カスミの供給源。



春に南からの、ということは熱帯の海で発生した湿った気団が、日本列島に近づく。それが日本列島の冷たい地表面で冷やされて、飽和水蒸気が絞り出される。これが春カスミの正体である。当地、三田市は盆地であるために、風の影響を受けにくく、それがために一層、カスミとキリが発生しやすい。

しかし、より大きな要因としては、緑の自然が多く残っているという事情である。イヤ、むしろ、この緑の自然が残っているということの方が、はるかに重要で、春カスミの原因のほとんどは、この緑の自然条件にあると言える。事実、アスファルトとコンクリートで覆われた市街地では、モヤとかカスミは、ほとんど見かけないのである。水蒸気の供給源としての自然の緑がない所に、霧もカスミも発生しないのである。

明け方から午前中にかけての、野原や山々、たんぼ、川辺では、この季節、毎日のようにモヤとカスミが見られる。もちろん、キリといえるような濃さではないが、景色全体が白いモヤの帳(とばり)につつまれるのである。

白く、淡く、おだやかで優しげな、そして少しひんやりした、そんな非常に薄くて細かい水蒸気が、地表面と空全体を覆っているのである。そしてまた、暖かい光も。直射光が水蒸気で拡散して、非常に穏やかで優しい、ぼんやりした明るい情景を映し出している。
春にやってくる、南からの湿った気団は、むしろ、春カスミの間接的な原因だったのである。それは春カスミの、水分の供給源だったのである。

また夏のように太陽の直射が肌をさすこともない。大気中の過多な飽和されずにいる水蒸気が、太陽の熱線を妨げているのである。太陽光は大気中の過多な水蒸気によって乱反射を繰り返し、それが落とす影といったものもぼやけている。こうしたことが身体に対しても、非常に穏やかな感触を与えている。

事実、新芽や草花といったものが、どこからでも方向を問わず伸びている。だから風景全体が、全体的に丸みを帯びた感じになっている。他の季節と異なって、熱と水(水蒸気)といったものが、方向を問わず度からでも均等に植物と作用しあっている。誰もが公平で同じスタートラインに立っている。それは新しい生命が生まれ出る舞台なのである。

戻る。             続く。

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