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8、暗示。



まるで自分がそれに誘われ、導かれるように惹かれ吸い込まれてゆく。そうした瞬間である。意識されることのない無意識の世界の、自分ではどうにもならない本能的な衝動といったものである。意識とか感覚以前の、自分ではもはやどうにもならない、抑えようのない衝動なのである。

それがはたして、いったい何を求め、欲しているのか、自分でもわからないし、確かめようがないのである。にもかかわらず、何か最も大事なものが抜け落ちていて、そしてそれが忘れられたままでいる。それがいったい何なのか自分でも思い出せないのである。だからなお一層、気になるし、苦しみ苛(さいな)まれるのである。

目に見える現実の、どこにでもある、どうでもよいようなものが、何かそれとは別のものを印象し求め導く記号や符号・サインのようなものに見えてくる。それを示唆する、なにかの予感や暗示のように思えてくるのである。


戻る。               続く。

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