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現実に生きている自分自身の、傷つき引き裂かれた地肌の奥から、なにかが浮き上がってくる。中から、生のままの得体の知れない生き物が死にそうに、息も絶えだえになりながら、浮き上がってくる。これこそが、自分自身の本当の姿なのである。 遠い山々の向こう側から、はてしない空のかなたから、限りない海の奥底から、つぶやき、ささやき、聞こえてくるのは、何かの忘れ物、見失ったもの、自分のなかで失われていったもの。それらが、自分のなかでささやき、語りかけ、呼びかけている。そして求め、いざない、手を差し伸べている。 自分のなかにある、タマシイが揺れてきしんで裂けてゆく。それまで、気づくことも、知ることもなかった、どうでもよかった現実の世界が、それの本当の意味をあらわにしてくる。いままで気づくことも知ることもなかったことが、見えても来るし、また、気づかされることになる。見えなかったことが見えてくる。 自分を外から見ている。自分で自分に気づき、そしてこの他人のような自分が自分を見ている。何もかもがまるで別世界のように見えてくる。今までとは違う自分に気づき、そしてまた、現実というのが、これまでとは全く別の意味を持って僕に迫ってくる。 |
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