| index ＜ 日誌 < ak春＜ 「春カスミの世界」p7/ |
| 春カスミとは、つまり、気候の穏やかさであり、水の豊かさであり、日差しの暖かさである。それは、冬の終わりを告げる色であるとともに、生命の復活と再生を暗示する色でもある。 この豊かな水と光に育まれて、閉ざされた冬の世界から新たな生命がめばえて来る。より豊かな水と光を求めて。だから植物は最初、ヨコに広がる。太陽の光を最大限に受け入れようと、枝葉の表面を漏れなく覆うようにヨコに広がる。だから外見上、丸くなる。空に向かう半円球のカタチを指向する。 それはまた、そうしたカタチが最も効率がよいのである。少ない材料でもって最大限に太陽の光を取り入れるには、それが最も理に適った合理的なカタチなのである。それは、野原の草花がそうだし、一本一本の木々も、林も、森も、山々の見た目の輪郭も、すべての角が無くなって丸みをおびた、ふっくらしたカタチになっている。 外気と身体とのあいだの表皮が未だ不完全なままで、弱く傷つきやすいままで、しかしそうした不完全なままのふっくらした状態が、地表のすべてを覆い尽くし始める。弱いと言っても地上の何もかもが、すべてがそうなのである。これはもはや誰にも押し戻すことの出来ない、地上の形勢なのである。 そしてこの世に生れ出たばかりの、植物の生命の色が鮮やかに、そのままの、あらわな形と色となって白いカスミのなかに浮かんでいる。シロ色の背景の中で、様々ないろんな色というのが、その純粋な色（明清色）を保ったままカスミのなかに現れてくる。 |
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