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4、生理。



心臓に対する圧迫は、たしかに空気が重く感じられるし、希望や望みの無いときは、やはり空気も暗く感じられる。これは情緒の世界であって、知らぬ間に自分を包む空気によって、自分が支配されているのである。

あるいは、支配されていると思えてくる。空気自体は何も変わらないのに、自分自身の神経や生理作用が苦しいだけなのに、それが何か空気が変わったように思えて来るのである。

実際、追い詰められてプレッシャーを受ける心臓は、動揺し混乱していて、それが息を詰まらせ、胸をつらく苦しいものにしているのである。そうした生理作用の困難さが、まるで自分の外の空気の重さとして感じられているのである。

めまいや、空気の暗さや重さもそうである。生きる望(のぞ)みや、目標を見失った人間にとっては、目に見える何もかもが、意味のないものに見えて来て、どうでもよい、何か暗いものとして感じられて来る。空気自体が暗いのではなくて、それを見ている自分の感覚が機能不全になっていて、何もかも暗く感じてしまうのである。

あるいはまた人間は、明るい昼のあいだは何も感じないのに、夜の暗い何も見えない世界では、一人で暗い気分に沈み込んでいって、なにやらワケの分からあに妄想に苦しみ出す。

オバケ、亡霊、あるいは理由なき底なしの「憂い」といったものがそうである。そうした沈み潜在したままの無意識の苦悶といったものは、たいてい誰もいない夜の暗い一人ぼっちの世界の中でひきずり込まれ、あるいは、立ち現れてくるものである。


戻る。              続く。

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