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たとえば、夜中の放射冷却によって大気が冷やされ、大気中の水分がしぼり出されて、キリとなって地面を覆い尽くす場合。。しかし、明かりがないと何も見えないので、夜明け近くなって始めてそれが、暗い灰色のキリとして見えてくる。夜明けと共に次第に明るさを増して来て、灰色からシロ色へとキリの色が変わり、やがて気温の上昇とともに、キリは消えて晴れる。 昼と夜の境い目。現実と非現実の間。これはいったいどちらの世界なのだろう。また、それが確かめられず、確かめようのない、うすぼんやりした月明りの世界。明暗の幅といったものが極端に狭く、薄暗い。影も乏しく、世界のすべてがのっぺりして、平坦に見えて、色もない。そうした、ぼんやりした月明りの世界。まるで世界が反転して、自分の内面、自分の影の世界を見ているような、そんな気持ちになって来る。 そして、やがてキリが立ち込めてきて何も見えなくなる。濃い灰色のキリが世界を覆い、何も見えなくなって、自分の足元も消えてゆく。自分が見えない。ここはいったいどこで、自分はいったい誰なのだろう? そうしたことが確かめられず、見つからずに、消えている。世界と、そして社会と自分とのキズナが切断されたように思えてくるのである。自分が、この社会の外の人間のように思えてくるのである。 やがて日は昇り、濃い灰色は薄い灰色へ、そしてシロいキリへと変わってゆく。しかし太陽はまだ見えない。淡いシロ色のキリに閉ざされたままなのだ。世界は少しまぶしいくらいに明るくなるが、閉じた白い霧(きり)のなかでは、ほんの十数メートル先が何も見えないままである。 |