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遠くの景色がシロ色まじりにボヤケてかすんで、春の鮮やかな四季の色が、うす白い背景のなかで、ぼんやりと現れては消える。心の中の何かの忘れもの、失われた記憶のカケラのように。ぼんやりと執拗に、そしていつまでも変わらずに、ずっとそうであり続ける。 うすシロい空気の色の、その空気中をただよう水滴によって、光は大気中で乱反射をくりかえし、散らばって、広がり、かきまわされて、光の持つ本来の方向性といったものを失う。つまり、すべての角度から均一に、光がものを照らしだしている。 太陽の光が春カスミのなかで、乱反射をくり返し、様々な角度から物体を照らし出している。これはある意味で、「カスミ」という反射する光源の中に、人間が出ている。人間が、光源としての光そのものの中を生きているのである。それは言わば、天上の世界、神々の世界なのである。方向を失った光の中で、人間もまた光と同化している。透かして、透過し、交じりあい、溶けて消えている。 |