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3、安心。



そうやって自分を偽(いつわ)り、偽りの自分を作り上げて、自分の今の居場所にしがみついている。そうである限り、何も見えないし、見てはならないし、見えても来なくなっている。また、そうである限り、自分は安心・安全であるし、そしてまた、何も変わることなく今いるこの場所で安住し続けることができるのである。

そうである限り、それは見ても、知っても、クチにしてもならないことなのである。自分が安心して生きて行くためには、そうしなければならない。そうであり続けなければならないし、それだけが、自分が生きて行ける唯一つの残された道なのである。

この、あらかじめ定められたレールを離れた所に、人間が生きて行く方法はないのである。よそ者、はぐれ者、正体不明の人間に誰も居場所を与えてはくれないのである。後ろ指を指され、就学・就職からも排除され、収入の手段を絶たれ、要するに生きて行けなくされる。

戦時中はこれを非国民と言い、今ではこれを非日本人と言う。要するに群れていなければ何もできない人々なのである。そうして社会全体が一丸となって絞め殺し始める。誰もが皆そうだから、誰一人として自分が悪いなどということは夢にも思わない。


戻る。             続く。

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