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日本列島の自然条件。 熱帯と寒帯、大陸と海洋、山の多い鉱物質の地形、そうした相対立する自然の狭間にあって揉まれ続け、時間的にも季節の変化に富んだ自然のなかで、私たちの祖先は暮らしてきたのである。 このような際立つ四季の変化と豊かな自然、さらにまた社会・文化的閉鎖性という地理的・歴史的制約の中から、一つの傾向といったものが導かれ押し出されてくる。それは、この風土の中で生きる人間の気質や気性、心の持ち方や、移りゆく心の変化のリズムといったものである。 性格は、表面的には内向的に見える。感情をあからさまに現す場合でも、どこか抑制されている。周りのみんなに気をつかって、波風を立てないように、無意識の内に抑制されるように心がけられている。幼い頃からそのようにシツケられるのである。 人間が密集し、文化的に均質化された閉じた空間にあって、変わったこと、知らないもの、異質なものなど、あろうはずもなく、あってもならず、当り前のこととして、わかりきった毎日が繰り返される。こうした同じことのくり返しが永遠に続くのである。 だからその興味や関心といったものは、同じことの日常に向けられることはない。それは人間に対してではなく、物に対して向けられる。日本列島の豊かで変化に富んだ自然に対して向けられるのである。手先が器用で物作りに長けているのは、ここから来ている。性格や気性といったものもそうである。 「一所懸命」ということわざも、ここから来ている。「不届き者」、思いやり、気づかい、などという日本的な気質もそうである。あるいはまた、自発的な順法意識や几帳面さもそうである。悪く言うと意地濃くて細かい。良く言うと、デリケートで細やかな精神の持ち主でもある。 ここでいう「不届き者」とは、どんな些細なことでも「お上=官僚」に届け出なければならないという意味である。お上の了承なしには、何もしてはならないという意味である。要するに、根っからの集団主義者なのである。 |