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4、あり得ないこと。



それは、他者との関係においては、ほとんど見られない。この場合、他者とは異民族のことであり、自分たちと異なる異質な民族と対立し、対抗し、張り合うといったことが、実際問題として、現実に起こらないからである。日本は島であって、現実に異民族の人間が接触してくる、ということがほとんど無かったからである。

外から入って来る技術に、人的な支配・被支配の関係が伴わないのである。そうした技術の本質的な部分が、海を渡る間に切断されてしまうのである。だからまた、ユニークでもあるし、創造的にならざるを得ないのである。

交易は物の移動だけであって、大陸におけるような、物と一緒に異邦人が出入りしたり交流するといったことが無かったのである。これが交易における、大陸と異なる日本的な顕著な特徴・特殊性なのである。

異民族との接触といった事が、現実にあり得ないことだったのである。だから、自分と異なるものを他人のなかに見るということが、ほとんどなかったのである。現実に異民族と接する場面というのが無かったのである。あったとしても、それはただ観念的で空想的な、現実離れしたものでしかなかったのである。他人からの言い伝えや書物を通して知る以外になかったのである。

現実の人とのかかわり、人間関係を通して異民族を意識する、自分とは異なる精神の世界を意識するということが無かったのである。それはあり得ないことだったのである。また、その必要がない世界を生きていたのである。


戻る。            続く。

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