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こうした曖昧で分かりづらい、つかみどころのない世界を私達は生きている。自分がいま生きている現実がそうであるし、あるいはまた、人類の歴史がそうであるし、現れては消えていった数々の文明世界がそうであったと言える。なぜなら、現実も、歴史も、文明も、すべてが制約された枠の中の世界だからである。 人間は、その制約された枠の中で生き、暮らし、生まれ、そして死んでゆく。そしてだれも、自分を定めているこの枠のことを深く考えたり、悩んだりすることはない。それは考えてはならないことなのである。自分の運命をのぞき込んだりしてはならないのである。 絶対的な、どうにもならないことについて、あれこれ悩んだり、疑いをいだいたりしてはならないのである。それは社会の根幹にかかわることであり、そしてそれ以上に、自己の存在理由とアイデンティティーに抵触する限りなくデリケートな問題だからである。 |