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それは無意識の世界、人間の意識の届かない世界である。その風土が作り出した人間の肉体の感じ方や生理作用の世界なのである。そうしたことが、その地で永続してくり返され、そしてそれが現実のカタチとなったのが、人間固有の肉体の骨格や内臓のサイズと構造、その機能と仕組み、神経や生理の作用といったものなのである。体内を流れる血液のリズムや肉体の生理の調和といったものなのである。そしてそれらが統合された全体として情緒や感受性といったものを作り出しているのである。 そうしたことが人間の意思とかかわりのないところから人間を支配し、人間を追い立て、導き、そして指向しているのである。それは自分にはどうにもならない本能や衝動とでもいったものである。身体の仕組み自体がそれを求めているのである。自分でも訳のわからない、得体の知れない、正体不明の、自分の中に住む、もう一人の他人のような自分なのである。 そうしたことが人間を支配していると思えてならないのである。肉体でも精神でもなく、意識でも現実でもなく、自分でも他人でもなく、あるいはまた、自分でも外の自然でもなく、ちょうどそれらの中間にあるもの、境界線上の接触面とでもいったものである。それらが常に互いに行き交い、交わり、錯綜し、入り混じり、困惑し、ためらい、戸惑っているのである。自分はいったい誰なのかと。 |
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