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2、裂け目。



自分自身の心の奥底から聞こえてくる得体の知れない苦しみやおびえ、叫びやあこがれといったものは、そんな優しいものでもチョロコイものでもないのである。精神以上に肉体が衝撃を受けている。それが幻覚とか、末梢神経の震え、めまいとして現れている。精神よりも肉体がより敏感で正直なのである。ウソをつかないのである。

わけもなく息苦しく、めまいがしてきて、心臓が圧迫される。苦しい。得体の知れない人影や、ささやく声に悩まされ、おびえ続けている。窒息してきて、息が詰まり、指さきが震える。そのまま気を失いそうになる。嘔吐でゲーゲーする。どうにもならないとか、耐えられないとは、このことなのである。

言葉でも理屈でもなくて、それ以前に精神がもたないのである。自分自身の精神が破壊されていって自分で自分が維持できなくなる。自分を見失い、自分が誰か分からなくなって、自分が自分でなくなって、自分がだれか他人に乗っ取られそうになるのである。そうした恐怖、叫びとおびえが、引き裂かれた精神の裂け目から聞こえてくるのである。


戻る。             続く。

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