index < 日誌 < w目の中< 「めざめ」p6/


 
3、天使。



それは、いつでも、どこでも、目に見える世界を漂いながら、ひらひらとさ迷っている。すがたカタチを変えながらも、まるでつかみどころのない幻のように漂い続けているのである。それが僕の精神を求め、招き、呼び起こしたのである。

自分の精神の中で、現実とは別の自分を見ているのである。自分の中で指向する、なにかの理想化された象徴が、イメージとなって観念の世界に映し出されているのである。あるいは、底なしの恐ろしさといったものが、すがたカタチを変えて、現実の世界にさ迷い出て来ているのである。

そうして、現実にないものが「見えた」と思えてくるのである。それとよく似たものが、誇大拡張されて見えてきたり、自分の偏見や思い込みが、無いものを見たと思わせているのである。

といっても、現実の世界そのものが、偽りとまやかしの世界そのものではないか。私たちは現実というのを、偏見と偽善、自分の都合と利害関係だけで見ていて、そして理解し、それを真実だと思い込んでいるのである。

だから、天使はいる。それはどうしても、いなければならないものなのである。そうでないと現実が壊れてしまうのである。だから、いつでも、どこでも、なにをしていても、天使はいつもすぐ近くにいて、僕をじっと見つめ続けているのである。優しく穏やかに手を差し伸べているのである。


戻る。            続く。

index < 日誌 < w目の中< 「めざめ」p6/