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6、半透明。



野原も、川辺も、山々も、生命が生まれ溢れて、満ちている。どこもかしこも地上のすべてがそうなのである。おだやかで優しげで、だれに対しても開いていて、いざなっている。親しげで、お互いが優しく交流し合っている。空気と水と生き物が共に作用し合って、呼吸し、浸透しあって、シンフォニーをかなでている、そんな感じである。

それだけではない。生き物たちの肉体内部がまたそうなのである。肉体の中に水分が多いのである。特に新たに成長した植物がそうである。まるで、生まれたばかりの赤ん坊のようにふっくら、フワフワしていて、丸みを帯びていて、そしてその中が半ば透き通て見えるのである。

それは見た目に弱々しく、いまにも壊れてしまいそうに見えながらも、けっして誰にも止めることは出来ないのである。それは世界全体が、だれもかもが、みなそうなのである。それは自然の流れとか、形勢とか、方向といったものなのである。だから、だれにも止めることは出来ないものなのである。

光が、生まれたばかりの植物の新緑や、めばえはじめた草花の表面を透過して、明るく照らし出して、少し離れて見るだけでも、これら水分の多い新緑や草花の中身が、半透明になって、光を透かして見えている。


戻る。              続く。

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