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そうやって何もかもが、見える世界の色や形や模様といったものすべてが、何か「丸み」を帯びて見えて来るのである。そして、そのように見えているというのは、それはそれでとっても大切なことであって、自分が現実に生きている世界といったものが、そうやって、優しくおだやかで親しい世界のように思えてくるし、感じられているということなのである。 それは、おだやかで緩やかに連続して拡がってゆく、線と色の濃淡、そしてカタチの世界である。優し気な曲線であり、面の陰の緩やかな濃淡である。それは、線で表現される形(カタチ)であり、面で表現された模様と陰影の世界である。 春のまばゆく明るいシロ色のキャンバス中から、淡く、薄く、柔らかく、まるで染みて溶け込んでゆくように、白い背景の中から薄ぼんやりと浮かび上がってくる。そして、やがて鮮やかに自己をあらわにしてくる。 しかし、それでもその輪郭線、つまり、景色とその背景の境界部分は曖昧で、薄ぼんやりしたままである。春カスミの白さがそれを曖昧にしたままで打ち消しているのである。白い背景の中から色の鮮やかさだけが露わに浮かび上がっている。 つまり、ここで単刀直入に言うと、春カスミの情景というのは、ひとことで言って「女性的」なのである。と同時に、その内面というのが外の世界に対して、なんのためらいもなく、あらわにむき出しになったままなのである。 |
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