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8、女性的。



まるで、いまにも壊れてしまいそうな、そんな危(あや)うさを感じさせるような無防備で世間知らずな、とっても可愛い鮮やかさである。外の白い背景ととっても親しい、そんな鮮やかさなのである。だからその内面というのが、何のためらいも恥じらいもなく、そのままであらわに映し出されているのである。

外に対して開いた境界線がもたらす、そんな無防備で無邪気な鮮やかさである。外の淡い白さに馴染んで、溶けて、染みていって、同化してゆくような、そんな鮮やかさである。

だから外面といったものを持たず、消えて、取り払われて、透明になって、内面がそのまま見えている状態である。だからまた、可憐で、可愛いく、危うく、壊れそうで、そしてそれがとっても大切なことのように思えてくるのである。つまり、男から見ると、それはまさに「女性的」なのである。

どこまでも淡く、薄く、すぐにも目の前に届きそうで、それでいてけっして届くことのない世界、はてしなく、限りない深みの中へ誘われ、導かれ、引き込まれて行く。そしてまた、けっして届くことがない、はてしのない永遠の祈りのようなものである。

だれをもキズつけることのない穏やかさ、だれをも優しく包んでくれる暖かさ、中からふっくらと開いて来て、ふんわりと自分を包んでいる、そうした肌ざわり。それが春の世界、春カスミの情景である。やはり女性的であるし、それ以外に表現のしようがないのである。 


戻る。              続く。

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