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夢の中とか、夜の星々の薄明りの世界、それとか霧の中の風景。それは間接光の支配する世界である。間接光(=環境光)は、大気中と地表上とで光が際限なく反射をくり返した結果生じる、ものの見え方で、雨が降る直前の濃い曇り日もまたそうで、様々な角度から光が入り込んで物体を照らすために、光そのものは減衰しながらも均質・均等にほぼまんべんなく拡がって行く。 そして同時に、景色の表面からコントラストや明るさの濃淡が弱くなり、奥行きのないのっぺりした平坦な感じに見えてくる。さらにまた、物体が落とす影そのものがなくなっていって、そうしたことが景色全体に、見える現実の世界といったものが、何か非現実の時間が止まったような印象を与える。これが間接光だけが支配する世界である。 しかし、そうでないの場合もある。たとえばまばゆい春カスミの白さの世界がそうである。同じ間接光だけであっても、まるで「エデンの園」や「桃源郷」のように見える。これは白いカスミの明るさといったものが風景の基調になっていて、まるで水彩画の中から風景が浮かんできて映し出されたような感じになっているからである。しかし、それでもやはり、非現実の時間の止まったような印象は強く受ける。 ではいったいどこが違うのかというと、「明るさ」が違うのである。同じ非現実の夢の世界であっても、まばゆい明るさの中ではそれが、開いて昇って行くめざめの世界に見えてくるし、薄暗い灰色の世界ではそれが閉じて沈んでゆく眠ったままの、めざめることのない世界に見えてくるのである。 |
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