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昼間、弱い薄雲が地表面を覆って漂い、太陽からの直射光をさえぎることがある。春カスミとか、局地的・一時的に発生する霧が地上を覆った場合がそうである。その下では、太陽の直接光(=直射光)は届かない。太陽の光は霧のなかで乱反射をくり返し、そして光は方向性を喪失する。 光は減衰しながらも際限なく繰り返される乱反射によって、物体をすべての角度から均等に照らし出し、と同時に均等に減衰してゆく陰影を作り出し、そしてまた、物体からもすべての方向へ向かって光を均等に反射している。これが間接光の世界なのである。 見える現実の世界から影がなくなって、景色の情景の濃淡やコントラスト、輪郭線といったものが、なぜかぼんやりしていて、ハッキリせず、それが映し出すはずの暗い(かげ)もどこか不自然で、というのは、物体表面の明暗と陰(かげ)の部分から方向性が消えてぼやけているからである。 不自然で非現実的なのである。景色には表と裏も、正面と背面も、前進も後退もなく、そして、それが映し出すはずの時間的変化も見えて来ない。そうした非現実の、時間が止まったような印象を受けるのである。 |
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