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4、見え方。



霧やカスミの正体がこの「不飽和水蒸気」だとすると、それが遠くの景色を見えなくしている。しかし反対に、たとえ湿気と水蒸気が多くても「飽和状態」の夏の空では、遠くの景色でもよく見えるのである。

風景が滲(にじ)んで見えてきて、バラバラな点と線がつながって、太い線となり、輪郭とカタチというのが、くっきりと太く浮かび上がってくる。そしてまた夏の強烈な光のコントラストが、それをいっそう際立たせている。そうして日本の夏の風景は、色の濃い景色全体が少しにじんだように見えてくる。つまり湿気が多いのである。

雨上がりの直後もそうだ。景色というのが滲(にじ)んで見えてきて、また輪郭がハッキリ見えている。遠くの景色もそうである。それは、空気中の飽和水蒸気量の増加が影響している。

それはまた、冬の気温の低い乾燥した飽和水蒸気量の極端に少ない、冬の景色の見え方と比べて見るとよくわかる。冬の景色は、滲むとは反対にカサカサしていて、全体がかすれて見える。どこか全体的に薄く、途切れ途切れになっていて、めくれて剥がれてゆくようで、潤いというのがまったく感じられない。


 戻る。             続く。

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