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思い過ごしに過ぎなかったことが、現実のことのように思えて来るし、また、そう感じられもしてくるし、あるいは、それこそが隠された本当の真実の世界のように思えてくるのである。 何かのものかげが人影として見えて来たり、自分が落とす影におびえたり、自分自身の異様な心臓の振幅が、近づいてくる他人の呼吸の音色(ねいろ)として聞こえて来たりするのである。 体内の血流の異常でコントロールできない、あり得ない流れといったものや、逆立つ髪の毛や、しっとりと、ヒヤリとした肌の感触といったものが、そうしたことのすべてが、自分の身体の中で起こっていることなのに、自分でコントロールできず、抑えることも出来ず、だからまた、それが自分ではあり得ないことなのであって、だれか自分以外の他人によって引き起こされていることのように思えてくるのである。それは、正常な感覚であれば、そうであるとしか言いようがないことなのである。 |
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