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8、見られている。



無限に移ろう変化のさまを、その変化の外側に住む人がながめている。外から見ると、それはちっぽけでたわいもなく、ささやかなものに過ぎないのであるが、その中でのみ生き続ける人間にとって見れば、それは永遠で無限な果てしなく広がる巨大な世界である。自分というのを外から見たことがないのである。

だからそれを知ることも、見ることも、理解することもなく、気づくこともなく、またその必要もなく、それが何のことなのか、まったくわからないのである。そうした記憶も経験も、またそうした感覚自体がもともとないのである。

だからまた不可解で不思議で理解に苦しみ、わずらわしく、うっとうしく、めんどくさくて、そしてなによりも気味がわるいのである。気持ちの悪い、何かの勘違いとしか思えないのである。それは自分とは関係のない未知の世界であって、知る必要もなく、知ってもならない異質が支配する世界なのである。


 戻る。            続く。

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