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これが近くの景色になるとキリが晴れてくる感じで、明るさの濃淡(陰影)よりも色の鮮やかさが際立っている。それは、昼の光の明るさと日差しの強さに原因がある。 初夏の山々のふもとの風景がそうである。強烈な日差しが谷間から大量に水蒸気を立ち昇らせて、それが光の散乱し入り乱れ方向を失った強い環境光となって世界全体を照らしている。 陰影部分を打ち消す霞(カスミ)の強い乱反射が、本来、カゲ(陰)である部分を白く明るく映し出している。まるで雲の中の光の世界を見るように。 だがしかし昼でも、遠くの山々をながめて見ると、やはり光の明るさの不足とあいだに入ってくるカスミ(水蒸気)のせいで、シルエットだけがいつまでも浮かんでいでいて、中の色と明るさのコントラストが消えている。 これは同じ水蒸気のカスミでも、遠くの景色と近くの景色とでは、その見え方というのが違ってくるということだ。たとえば近くだと、景色は豊かな光の下で色鮮やかに映しだされるし、それが遠くにあると背景は薄暗く、その中の色合いも薄くなって消えているのである。 このカスミの世界を近くで見ると周りの背景が白く消えていて、目の前の近くの景色だけが、白い背景の中から浮かび上がって見えている。まるで光の中の世界から出てきたように。 |
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