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３、灰色。



だから、夢の中の背景は色なき明るさだけの明暗として表現される。しかし、明るいだけだとまぶしくて目を閉じていられない。そうやって意識は目を開いて現実の世界へ出てゆくしかないのであって、この時点で夢の世界が終る。だから夢の中の自意識の世界は白ではない。

しかし黒でもない。黒とは、何も見えないということであって、これだと見ているのか見ていないのか分からない。そもそも、真っ黒の世界で何かを見ることができるのかという、視覚器官の存在自体が疑われる。見ることと見えないことの区別がなくなる。何かを見ているのか見ていないのかという識別ができなくなる。だから黒色でもない。

だからそれは薄暗い灰色である。目にもっとも優しく神経が休んでいる状態の色である。ほとんどなにも見えないが、それでも見ることができる、見ているのだということが意識できる、ぎりぎりの明るさ、つまり薄暗い濃灰色の世界である。


　戻る。　　　　　　　　　　　　　　続く。

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