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2、真っ暗。



「真っ暗」というのは何も見えない。目を開いていても閉じていても同じ状態である。自分でも目を開いているのか、閉じているのかわからないのである。それが夢なのか現実なのか識別できないのである。確かめることも、自覚することもできず、はたしてそれ以前に自分に目があるのかどうかもわからない、そういう状態である。

目の中が真っ暗で何も見えないということ。ないから見えないのか、あるのに見えないのか、たしかめようのない世界。ということは、確かめる本人がいるのかいないのか、それすらもわからず自分の意識がつかめられずに自己認識が不明の状態。自分がわからない状態である。自分を確かめることのできない世界である。

何か有るのか無いのか?そして、それ以前に、それを見ていると思っている自分の意識そのものに、果てしない疑惑をいだくのである。自意識というのを、あるいは自分自身の存在というのを確かめようがない世界なのである。だから夢の背景色は、濃灰ないし暗い灰色でなければならないのである。

闇の中からそれでも何かが見えてくると思えるような、そんな世界でなければならないのである。限りなく薄れてゆく意識のなかで、それでも何かに気づくような、そんな世界でなければならないのである。

そうした闇の底から、忘れられていた記憶がよみがえって来て、淡い灰色のシルエットとなって、浮かんでくるのである。初めは途切れ途切れの線。そしてそれがつながって線となり、輪郭となり、そしてなにかの姿のように見えてくるのである。そしてやがて、そのすがたの表面に模様と色が現れてきて、それが何だったのかというのがわかってくる。


戻る。               続く。

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