index < 日誌 <日本、自意識、<18-69「アイドルの女子」 |
グラビアや雑誌、テレビ、そして現実の街中を行き交う人々の顔付からは、陰(かげ)が見えない。その精神の内部には何もない。何も持たない。彼女(または彼)が思ったことがそのまま現実なのである。現実と彼女の心の中をへだてるものは何もない。区別もない。そうした、ただひたすらに透明な世界、ケジメと区別のない世界。自己と他者の区別がない。 自分だけの、誰にもけっして渡すことの出来ない人格とか、自意識といったものもない。この世に生まれた途端、そうしたものは不必要で無用な汚物として抹殺され、消し去られたかのように痕跡すら見当たらない。 そうした内部になにも持たないただひたすら純粋で透明な精神。かくし事などなにもなく、それと同じく自分自身の心の中に、自分だけのプライベート・ルームなども持たない。そうした純粋に透明な精神。幼児がそのまま大人になってしまったような世界。それが女の顔にそのまま表現されている。 確かにこの上なく純真でかわいく、すなおで、そして清潔で正直でもある。そうした純粋で透明な顔。言いかえると、そこからは何も見えてこない、そうした人間の「表情」なのである。彼女の精神というのが何も見えない。というより、本来あるはずの彼女自身の個性というのが見当たらないのである。「表情」から彼女の精神が消し去られている。 彼女でなければならない、そうした彼女自身の「理由」が無いのである。そうした非現実的な世界。だれもが勝手にそうであるはずだ、そうでなければならないと思い込み信じさせられているだけの世界。学校も新聞も政府もそうである。すべてが、現実に背を向けた虚構の世界なのである。 |
index < 日誌 <日本、自意識、<18-69「アイドルの女子