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10、作りもの。



それは人民大衆がそれを望み願ったことなのだ。権威、つまり教授や弁護士、新聞やテレビは、ただ大衆が望むことを忠実に反映するのである。この忠実さこそが権威の値打ちといったものである。それが正しいことかどうかは誰も預かり知らぬことであって、そうして世の中がうまく回っているのである。

大衆は、正義とか悪などといったこととは無縁の存在である。そんなことよりも自分にとって有利なこと、便利なこと、楽しいことだけを願うのである。それも手間ヒマかけず、おカネもかけずにである。とすれば、どうしてもカタチだけの中身がカラッポのイミテーションになるしかない。そしてまさにそれこそが大衆のもっとも望むことなのである。中身が詰まったのは重たくて疲れるのである。

中身と内実が限りなく薄れて行き、それに反して外面の形式だけが立派になって内面から離れてゆく。まるで、なにかのヌケガラのような全くわけのわからない得体の知れないものになってゆく。

あるのは目に見える外面だけで、その内容としての精神的で内面的なものが限りなく薄れてゆく。現実の世界というのが、まるで夢の中のような「作りもの」の世界のように思えてくる。客観的な確固たる現実性が感じられないのである。


戻る。               続く。

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