index < 日誌 < 光の中 < 「光」p4


 
2、入口。



逆光だけであれば、背後からの光によって、ものの輪郭は光の強さの中で白くボヤケて消えてゆく。そしてその表面は、ぼやけた薄暗い影のようになっている。コントラストを欠いて、表面の模様から濃淡が消えて、非現実の凹凸のない平板のようになる。また、ものの表面そのものが薄暗い影となって、なにも見えなくなっている。

そして、もしもこの逆光というのが、キリ(またはカスミ)の中で、ものを照らしている場合はどうだろう?物と人間の目のあいだに、霧が入ってくるのである。光は逆光という方向性を失う。霧のなかで光が乱反射を繰り返し、様々に、すべての角度からものを照らし映しだすのである。従って影は無い。

光が方向性を失う。それはつまり、ものが光の中で照らされているということである。光に照らされているのではなくて、光そのものの中に「もの」が入っているという状態である。だから不思議で不可解で、幻想的で、まるで空間の中にぽっかりと開いた異世界への出入口のように思えてくるのである。

戻る。            続く。

index < 日誌 < 光の中 < 「光」p4