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照射される太陽の光が、霧やカスミに妨げられて、乱反射をくり返して、太陽の光がその方向性を失うというのは、何か非現実的な世界なのである。ものが落とす影がなく、ものの表面にも陰影がない。ネガもポジもない。現実と非現実の境界がない。ものの表面の陰影が暗示する、内面から映し出される表情もない。 外面も内面もなく、意識と無意識の世界を行ったり来たりしている。または、意識と無意識の境目、境界線、区別がない。内面も外面もなく、自分と他人の区別もなく、自分というのを喪失している。 現実と非現実が混乱し、混同し、入りまじり、自分と他人の区別も限りなくかすんで薄れてゆく。自分が誰かわからなくなって、またそんなことはどうでもよいことのように思えてきて、自分がだれか別人のように思えてくる。自分は、自分でも他人でもなくて、それとは別の世界の、肉体を喪失し現実世界から逸脱した、タマシイだけの存在のように思えてくる。まるで夢の中の世界のように。 そうした時間が止まったような世界なのである。太陽が時間と共にその位置を変え、ものに影を落とし、ものの表面に明暗の陰影をつくりだす。そしてまた昼と夜がやってくる。これが太陽の光がつくりだす方向性なのである。 この陰影の濃淡とその移り行く変化のありさまは、時間という時の流れの中を人間が生きているということを意味している。またそうした現実の世界を作り出している。人間の暮らしそのもが太陽が作り出す時間の流れの中で営まれているのである。。だから、影がないというのはどこか非現実的で不思議な違和感を覚えるのである。それは、あり得ないことなのである。 |