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まぶしい逆光を背にして、なにかの輪郭があちこちで途切れ途切れになりながら、何かの影の線のように見える。これは戒(いまし)めなのだ。標識であり、そして越えてはならない暗示や目印しとして、光のまぶしさの中の小さな影となって浮かんできているのである。 そうだ、これは戒めであり、儀式なのだ。そしてその鎮魂のための墓標なのだ。ぼくの精神のなかで消し去って、埋(うず)めて、押しつぶしてきた、何かの破壊された残骸の跡なのだ。だから、線だけなのだ。身もなければ肉体もない。表面というのがない。途切れた線のかすかな輪郭だけで構成されたのだ。 その実体を構成しているはずの中身と肉体といったものが、いつの間にか失われていて、物体の表面というのが壊れて無くなっていって、廃(すた)れ、崩れて、消えて行って、そしてその最後の骨のカケラだけが残っているのである。これが微かなぼやけた線だけで構成された影の世界なのである。 |
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