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3、痕跡。


それは、本人の記憶のなかでは、とっくの昔に忘れられ、失われ、消えてしまっている出来事なのである。そうした記憶の痕跡とでもいったものが、なぜに今も何かしらの暗示のように夢の世界に出てくるのだろうか。

なぜか?
なぜならそれは、言葉や物として意識され、そしてそれが記憶として残されてきたものではない、ということを意味している。それは、自分自身の中の感覚の感じ方や、その機能の仕方として保存され記憶されてきたものなのである。そうした意味で、それは自分たちの祖先の記憶の世界を見ているのである。

それは頭の中で、イメージや観念として記憶されたものではなくて、感覚の感覚として、もの言わぬ感覚のくり返されるパターンとして、感覚自身のなかで保存されてきたものだからである。だからまた、何かを「感じる」といった場合、非常に直感的で本能的、衝動的なものとして感じられてくるのである。それは、それ以外に感じようのない感覚なのである。


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